採用計画数に採用内定(配属予定)が達していない事業所割合は「高校卒」で56%、「大学卒(文科系)」で48%
 ――厚生労働省「労働経済動向調査」の特別項目「2025年新規学卒者の採用内定状況」から

新卒採用の動向

厚生労働省が3月25日に発表した「労働経済動向調査」(2025年2月1日現在)では、労働者の過不足状況や雇用状況等をまとめた定例項目と合わせて、特別項目である「2025年新規学卒者の採用内定状況」の結果を公表している。その結果をみると、採用計画数どおり採用内定(配属予定)できた事業所の割合はいずれの学歴でも5割を下回った。採用計画数に採用内定(配属予定)が達していない事業所の割合は、「高校卒」と「大学卒(理科系)」で56%と半数を超え、「大学卒(文科系)」で48%と半数近かった。特別項目の調査結果に絞り、概要を紹介する。

高校卒や大学卒での採用計画・予定がある事業所は4割超

2025年新規学卒者の採用計画・採用予定がある事業所の割合を学歴別にみると、「高校卒」が44%(前年比1ポイント増)、「高専・短大卒」が37%(同2ポイント増)、「大学卒(文科系)」が45%(同2ポイント増)、「大学卒(理科系)」が43%(同1ポイント減)、「大学院卒」が27%(前年と変わらず)、「専修学校卒」が28%(同1ポイント増)となっており、高校卒や大学卒で4割を超えている。

なお、2025年新規学卒者とは、2025年3月卒業予定者、またはおおむね卒業後1年以内の者を2025年3月卒業予定者とほぼ同等の条件で2025年度に採用する者をいう。

同割合を業種別にみると、「高校卒」では「製造業」が74%(同1ポイント増)で最も高く、次いで「建設業」が58%(同6ポイント減)、「宿泊業、飲食サービス業」が45%(同5ポイント増)などとなっている。

「高専・短大卒」では「建設業」が53%(前年と変わらず)で最も高く、以下、「情報通信業」の47%(同3ポイント減)、「製造業」と「医療、福祉」の45%(それぞれ同3ポイント増、2ポイント増)などと続く。

大卒では文系・理系ともに「情報通信業」の割合が最も高い

「大学卒(文科系)」では、「情報通信業」が76%(同6ポイント減)で最も高く、以下、「金融業、保険業」の68%(同3ポイント増)、「建設業」と「学術研究、専門・技術サービス業」の55%(それぞれ同3ポイント減、3ポイント増)などと続く。

「大学卒(理科系)」でも最も高いのは「情報通信業」(76%、同7ポイント減)となっており、こちらは「学術研究、専門・技術サービス業」の70%(同3ポイント増)、「建設業」の62%(同4ポイント減)などと続く。

「大学院卒」では「情報通信業」が65%(同10ポイント減)で最も高く、「学術研究、専門・技術サービス業」が50%(同5ポイント減)となっている。

「専修学校卒」では「医療、福祉」が46%(同1ポイント増)で最も高く、これに「建設業」(45%、前年と変わらず)、「情報通信業」(41%、同3ポイント減)などと続く。

採用計画数より多く採用内定(配属予定)した事業所は1割未満

2025年新規学卒者の採用計画・採用予定がある事業所における、採用計画数に対する採用内定(配属予定)の状況を学歴別にみると、「採用計画数より多く採用内定(配属予定)をした」事業所はいずれの学歴も1割に達していない。主なものをみると、「高校卒」で6%、「大学卒(文科系)」で6%、「大学卒(理科系)」で4%などとなっている。

「採用計画数どおり採用内定(配属予定)をした」事業所は、「高校卒」が38%(同7ポイント増)、「大学卒(文科系)」が47%(前年と変わらず)、「大学卒(理科系)」が41%(前年と変わらず)、「大学院卒」が45%(同5ポイント増)、「高専・短大卒」が38%(同3ポイント増)、「専修学校卒」が37%(同4ポイント増)で、いずれも5割に達していない。

採用計画数に採用内定(配属予定)が達しない事業所は「専修学校卒」では6割

「採用計画数以上の応募者数はあったが計画数までの採用内定は行わなかった」と「採用計画数に応募者数が達していない」を合わせた、「採用計画数に採用内定(配属予定)が達していない」事業所の割合をみると、「高校卒」が56%(内訳は上記の順で3%、52%)で前年比8ポイント減、「大学卒(文科系)」が48%(同9%、39%)で前年比1ポイント増、「大学卒(理科系)」が56%(同10%、46%)で前年比1ポイント増、「大学院卒」が52%(同10%、42%)で前年比2ポイント減、「高専・短大卒」が59%(同6%、53%)で前年比3ポイント減、「専修学校卒」が60%(同7%、53%)で前年比2ポイント減となっており、「大学卒(文科系)」を除くすべての学歴で5割以上にのぼった。

中小事業所ほど採用計画数に採用内定(配属予定)が足りず

「採用計画数に採用内定(配属予定)が達していない」割合を、学歴ごとに企業規模別にみると、おおむねすべての学歴で、企業規模が小さくなるほど割合が高くなる傾向が見て取れる(図表)。同割合は「1,000人以上」ではすべての学歴が4割未満となっている一方、999人以下の各規模では、「大学卒(文科系)」を除き、いずれも6割以上となっており、中小企業のほうが人材確保に苦慮する様子がうかがえる。

図表:「採用計画数に採用内定(配属予定)が達していない」事業所の割合
(学歴ごとに企業規模別)

画像:図表

(公表資料をもとに編集部で作成)

特に「大学院卒」では、「30~99人」が96%(前年比18ポイント増)、「100~299人」が82%(同3ポイント増)、「300~999人」が60%(同5ポイント減)と、特に「30~99人」の割合が前年から大幅に増加している。また、「1,000人以上」は29%(同8ポイント減)と3割以下であり、規模間の差が特に大きいのが目についた。

労働経済動向調査は四半期ごとに行われている。今回の調査は2025年2月1日現在の状況について、主要産業の規模30人以上の民営事業所のうちから5,786事業所を抽出して調査を行い、3,059事業所(有効回答は2,996事業所、51.8%)から回答を得た。

(調査部)