賃金の男女格差が1976年以降で最も縮小
――厚生労働省「2024年賃金構造基本統計調査」結果からみる女性賃金の現況
国内トピックス
厚生労働省が3月に発表した「2024年賃金構造基本統計調査」結果によると、一般労働者(いわゆるフルタイム労働者)の月額賃金(賞与、残業代除く)は男性を100とした場合、女性は75.8となり、男女の賃金格差は比較可能な1976年以降で最少となった。女性の月額賃金は27万5,300円で、前年に比べ4.8%増加した。女性の賃金に焦点を当て、調査結果の概要を紹介する。
男女の賃金格差は長期的には縮小傾向にある
前年(2023年)の調査では、男性の賃金を100とした場合の女性の賃金は74.8で、前年から1.0ポイント格差が縮小したことになる。これまで最も格差が縮小したのは2022年調査の75.7だった。時系列でみると、長期的には男女の賃金格差は縮小傾向にある(図表1)。
図表1:男女間賃金格差の推移(男性=100)
注:2020年より推計方法を変更している。
(公表資料から編集部で作成)
月額賃金は男性が36万3,100円で、女性が27万5,300円
男女計の月額賃金は33万400円で、前年から3.8%増加した。男性は前年比3.5%増の36万3,100円で、女性は同4.8%増の27万5,300円。
物価の変動を考慮しない名目賃金の時系列の推移をみると(図表2)、2000年頃までは男女ともに増加傾向にあった。その後、2000年から2020年にかけて女性の賃金は約14%増加した一方で(編集部で算出)、男性はほぼ横ばいに推移した。2024年の増加率は、男女ともに1992年以降では最も高くなっている。
図表2:一般労働者の賃金の推移(男女別)
注:2020年より推計方法を変更している。
(公表資料から編集部で作成)
賃金カーブのピークは男性が「55~59歳」、女性が「45~49歳」
賃金カーブの形状をみると、女性は、「~19歳」が前年比1.5%増の19万1,300円、「20~24歳」が同5.0%増の23万600円、「25~29歳」が同5.0%増の25万8,100円、「30~34歳」が同4.6%増の27万1,600円、「35~39歳」が同5.3%増の28万4,300円、「40~44歳」が同4.2%増の28万8,400円、「45~49歳」が同5.8%増の29万8,000円、「50~54歳」が同3.3%増の29万5,400円、「55~59歳」が同4.4%増の29万4,000円、「60~64歳」が同5.4%増の25万9,900円、「65~69歳」が同7.8%増の23万4,000円となっている。
前年比は、「~19歳」と「50~54歳」を除いた階級で4%超。年齢が上がるにつれて賃金が高くなっているが、賃金カーブの山は緩やかで、ピークは「45~49歳」となっている(図表3)。
図表3:男女別、年齢階級別賃金(2024年)
(公表資料から編集部で作成)
男性と比べると、ピークの年齢は男性(「55~59歳」)よりも低く、また、賃金の上昇の度合いが男性よりも緩やかになっている。なお、男性は「55~59歳」(44万4,100円)からの落ち込み度合いが激しいことが確認できる。
学歴別に増加率をみると最も大きいのは大卒で5%超の増加
女性の賃金を学歴別にみると、「高校」が23万7,700円(前年比3.1%増)、「専門学校」が28万1,300円(同3.5%増)、「高専・短大」が28万4,200円(同3.9%増)、「大学」が31万5,100円(同5.3%増)、「大学院」が42万900円(同3.2%増)となっており、「大学」が5%超の伸びで、最も伸び幅が大きい。
女性の賃金カーブの形状を学歴別にみると、「高校」「専門学校」「高専・短大」「大学」は「55~59歳」がピークとなっている一方、「大学院」は「60~64歳」がピークとなっている(図表4)。なお、男性はいずれの学歴も「55~59歳」がピークとなっており、「高校」が36万9,400円、「専門学校」が39万6,000円、「高専・短大」が45万3,500円、「大学」が54万9,600円、「大学院」が69万6,000円となっている。
図表4:学歴別、年齢階級別賃金(2024年、女性)
(公表資料から編集部で作成)
女性賃金は大企業と小企業では「45~49歳」がピーク
女性の賃金を企業規模別にみると、1,000人以上の「大企業」が29万6,600円、「中企業」(100~999人)が27万1,300円、「小企業」(10~99人)が25万5,500円となっている。
女性の賃金カーブの形状をみると、「大企業」「小企業」は「45~49歳」(それぞれ32万5,200円、27万2,500円)がピークとなっている一方、「中企業」は「50~54歳」(29万5,900円)がピークとなっている。ただしいずれの企業規模においても、45~59歳にかけてはカーブが平坦でほとんど変化していない(図表5)。なお、男性はいずれの企業規模も「55~59歳」がピークとなっている。
図表5:雇用形態別、年齢階級別賃金(2024年、女性)
(公表資料から編集部で作成)
女性の企業規模別賃金の対前年比に着目すると、「大企業」と「小企業」のピークの「45~49歳」では「大企業」が8.6%増加しているのに対し、「中企業」は4.6%増、「小企業」も3.6%増。「中企業」のピークの「50~54歳」も、「大企業」は5.4%増加しているのに対し、「中企業」は3.1%増にとどまり、「小企業」は0.2%減少しているなど、対前年増減率の企業規模間格差が目立つ結果となっている。
最も高い産業は「電気・ガス・熱供給・水道業」で34万8,600円
女性の賃金を産業別にみると、「電気・ガス・熱供給・水道業」(34万8,600円)が最も高く、次いで「情報通信業」(33万3,800円)、「金融業、保険業」(32万3,600円)、「教育、学習支援業」(32万3,500円)、「学術研究、専門・技術サービス業」(32万1,300円)などとなっており、最も低いのは「宿泊業、飲食サービス業」(23万3,700円)で、次いで「製造業」(24万3,700円)、「生活関連サービス業、娯楽業」および「サービス業(他に分類されないもの)」(ともに24万8,400円)などとなっている。
男女ともに増加率は「正社員・正職員」のほうが高い
雇用形態別にみると、女性は「正社員・正職員」が29万4,200円(前年比4.4%増)で、「正社員・正職員以外」が21万300円(同3.3%増)となっている。なお、男性は、「正社員・正職員」が37万6,900円(同3.7%増)、「正社員・正職員以外」が25万9,200円(同1.6%増)で、男女いずれにおいても「正社員・正職員」のほうが「正社員・正職員以外」よりも高い増加率となっている。
女性の賃金カーブの形状を雇用形態別にみると、「正社員・正職員」は「55~59歳」(32万7,200円)がピークとなっている。「正社員・正職員以外」は「60~64歳」(21万7,000円)がピークとなっているものの、25歳以降はほぼフラットの形状となっている(図表6)。なお、男性におけるピークは「正社員・正職員」が「55~59歳」(45万9,100円)、「正社員・正職員以外」が「60~64歳」(29万8,700円)となっている。
図表6:雇用形態別、年齢階級別賃金(2024年、女性)
(公表資料から編集部で作成)
役職が同じでも賃金は女性のほうが低い
役職別にみると、女性は、「部長級」が54万9,900円(52.7歳、勤続19.4年)、「課長級」が45万8,100円(49.3歳、勤続19.2年)、「係長級」が35万4,000円(46.0歳、勤続16.9年)、「非役職者」が27万300円(41.0歳、勤続9.3年)となっている。
一方、男性は、「部長級」が63万6,400円(53.0歳、勤続22.6年)、「課長級」が52万2,400円(49.3歳、勤続21.0年)、「係長級」が39万6,300円(45.4歳、勤続18.1年)、「非役職者」が32万5,600円(41.8歳、勤続11.4年)となっており、男女で比較すると、いずれの役職でも男性のほうが高く、部長級で8万6,500円、課長級で6万4,300円、係長級で4万2,300円の賃金差がついている。なお、いずれの役職も、年齢には男女差がほとんどないが、勤続年数は女性のほうが短くなっている。
短時間労働者の時給は男性が2.5%増、女性が5.7%増
女性の短時間労働者の1時間あたりの賃金は1,387円(同5.7%増)で、男性は1,699円(前年比2.5%増)となっている。
女性の賃金カーブの形状をみると、「30~34歳」(1,545円)がピークとなっており、次いで「35~39歳」(1,539円)、「40~44歳」(1,503円)などの順で高い(図表7)。「50~54歳」まで低下傾向にあるが、「55~59歳」から再び水準が上がる傾向がみられる。
図表7:短時間労働者の年齢階級別1時間あたり賃金(2024年、女性)
(公表資料から編集部で作成)
(調査部)
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