調査シリーズ No.116
大学・短期大学・高等専門学校・専門学校におけるキャリアガイダンスと就職支援の方法
―就職課・キャリアセンターに対する調査結果―
概要
研究の目的
大学・短期大学・高等専門学校・専門学校における具体的なキャリアガイダンスや就職支援の方法を明らかにすること。
研究の方法
- 調査対象:大学(1,071箇所)、短期大学(370箇所)、高等専門学校(62箇所)、専門学校(341箇所)に調査票を郵送した。専門学校以外は全数調査とし、同一校が複数キャンパスをもつ場合はそれぞれに送付した。
- 回収率:回収は郵便とWEB入力の両方で行い、学校実数に対する回収率は大学63.5%、短期大学51.2%、高等専門学校89.5%、専門学校23.3%となった。
- 実査期間:平成25年8月下旬~9月中旬。
- 設問構成:具体的な就職支援の内容、学生の適性・個性理解のためのツールの活用とニーズ、職業情報・求人情報の活用、就職課・キャリアセンターの重点課題と体制
主な事実発見
- 学生全体に対する集団セミナーとしては、就職活動全般に関わるガイダンス、就職試験対策の模試、エントリーシートの書き方、面接対策等の具体的な講座等の各種の情報が、就職課の職員を含め、学外の専門家、委託業者、ハローワーク職員等を活用して提供されている。
- 学生への個別相談では、全学校種で、“未内定者に対する相談”が特に丁寧、慎重な対応を心がけているものとして選択率が高かった。また、“メンタルヘルスに問題を抱えた学生”に対する相談は対応が難しいという回答が多かった。個別相談については、大学で7割弱、短期大学で6割弱、高等専門学校と専門学校で4割台が、学外の専門家、委託業者、ハローワーク職員等の外部専門家等を“活用している”と回答した。
- 適性検査等、テストの実施割合は、大学で7割、高等専門学校で5割、短期大学、専門学校で約4割であった。実施の理由としては「学生が自分自身の適性を理解するために役立てることができるから」が学校種共通で8割~9割の選択率となった。このほか、「職業選択に対する意識を高めることができるから」は大学、短期大学の約7割が選択していた。「教職員が学生の指導や支援をする上で役立てることができるから」という理由は専門学校で高く、7割を超えていた。
- 学生に利用が勧められている職業情報としては、Webサイト等のインターネットによる情報が他の媒体と比べて多かった。職業情報に期待することとして、全学校種で多かったのは、“就職活動に向けて学生が職業に興味をもつこと”、“就職後、実際にどのような仕事をするか具体的に学生にわかること”であった。求人情報への意見については、学校種で順位に違いがあるが、選択が多かったものとして“OBやOG、卒業生から求人情報をもっと集められるとよい”、“学校がもっと求人情報を集めるとよい”、“公的機関や民間企業が求人情報をもっと収集し、学校に提供するとよい”があげられた。
- 現在あるいは中長期的に取り組んでいる重点課題として、どの学校種でも“就活意欲の低い学生や就職困難な学生への呼びかけやアプローチ”、“低学年からのキャリアに対する意識づけ”が重視されていた。自ら就職活動を積極的に行う学生と、意欲がなく就職活動ができない学生の二極化が指摘されており、そういった学生への対応が課題となっている(図表1)。
- 現在の問題点に関する自由記述を、“学生(学生そのものに関する記述)”、“スタッフ(就職課職員の課題についての記述)”、“連携(教員等学内での連携や学外との連携に関する記述)”、“制度(学校と卒業後の進路、入学前の教育課程等の移行に関する記述)”、“現行プログラム(就職課が提供する各種プログラムについての記述)”という5つに分類したところ、大学と短期大学では“学生”が5割で最も多く、“現行プログラム”、“連携”の順となった。高等専門学校では、“現行プログラム”が4割で最も多く、“制度”が最も少なく、“学生”、“スタッフ”、“連携”は同じ割合となった。専門学校では、“学生”が5割を超え最も多く、次が“現行プログラム”となった。
- 学校種で回答傾向に違いがあり、卒業後の進路がほぼ定まっている高等専門学校や専門学校と、卒業後の進路が多様な大学、短期大学において、就職支援の内容に違いが見られた。大学のみを対象とした分析でも、規模、進路未決定者の割合によって回答傾向に違いがみられた(図表2)。
図表1 現在あるいは中長期的に重点的に取り組んでいる課題(複数選択可)
※リンク先で拡大しない場合はもう一度クリックしてください。
図表2 大学の進路未決定者率による群ごとの重点課題の選択率(複数回答可)
※リンク先で拡大しない場合はもう一度クリックしてください。
政策的インプリケーション
近年、新卒応援ハローワーク、わかものハローワークなどの公的な職業相談機関が学生や若年者の就職支援に力を注いでいる。本研究は、そういった状況の中で、教育機関が学生の就職支援に向けて公的サービスをどのように利用しているのか、あるいは教育機関の就職課・キャリアセンターが抱えている課題は何かを明らかにすることで、若年者の就職支援に役立つ公的サービスはどのようなものか、また、ノウハウを適切に提供するにはどのようにするのがよいか等の手がかりとなる資料を提供している。
政策への貢献
本調査では、各学校に在学する学生のうち、就職意欲がなかったり、就職がうまくいかないなど、就職活動に困難さを感じている学生への支援が課題となっていることがわかった。ハローワーク等への公的なサービスに対しては、求人情報を基盤として、個々の学生に対して個別相談等を通したアプローチを行い、具体的に支援することへの期待が示唆されている。本調査の結果は、ハローワーク等の公的なサービスが行う直接的な支援のうち、学校にとって必要で効果的な支援内容と方法を検討するための素材として活用されると考えられる。さらに、就職が難しい学生のみならず、学生全体の職業意識の発達を促すためにはどうすればいいかという点に対して、現場からのニーズを踏まえた上での有効な情報提供のあり方、効果的なガイダンスや相談の方法、就職課・キャリアセンターと学校内外との連携や就職支援の体制作りを検討するための素材を提供するものである。
本文
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研究の区分
プロジェクト研究「生涯にわたるキャリア形成支援と就職促進に関する調査研究」
サブテーマ「就職困難者等の特性把握と就職支援に関する調査研究」
研究期間
平成24~25年度
執筆担当者
- 室山 晴美
- 労働政策研究・研修機構 キャリア支援部門 副統括研究員
- 深町 珠由
- 労働政策研究・研修機構 キャリア支援部門 副主任研究員
- 松本 真作
- 労働政策研究・研修機構 キャリア支援部門 副統括研究員
- 松本 純平
- 労働政策研究・研修機構 キャリア支援部門 元特任研究員